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『深く生きる』 |
第一に大切なことは、本当の自分に出遇っていくということを考えて欲しいと思います。河合隼雄(かわいはやお)さんという人をご存知でしょうか。臨床心理学者ですが、その方の本に、夜釣りをした人の話が載っています。
夜中に船のエンジンが停止して、帰れなくなった時のことです。人々はあわてふためいて、誰かが海の上をライトで照らしましたが、数十メートル先まで見えるが、帰るべき浜は全然見えません。一体どうしたらよいのだろうと、乗組員たちは、思案にくれました。その時一人が「そのライトを消せよ」と言いました。ライトを消してあたりが真っ暗になりましたが、目が慣れてくると、うっすらと、ぼんやり浜の町の灯りが見えてきたのです。「あっ、港はあっちだ」といって、皆で力を合わせて帰ることが出来たそうです。私はこの本を読ませていただいたとき、凄いことだと思いました。私たちは、手元の明るさに眩惑されて、モノが見えなくなってしまう。それが消したとき、向こうから見えてくる世界があるのです。
私たちは明るさを求めています。しかし、あまりにも明るすぎると、眩惑されて、大切なものが見えてこないのではないでしょうか。 |
(平成11年1月) |
松月先生は今度の彼岸法要のご講師です。すばらしいご縁ですので、足を運んでください。 |
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